『孤独の造形 1-4』は、“どのような方向から見ても決して顔の見えない人物”を体験者に提示するMR(Mixed Reality)インスタレーション作品です。システムは、現実とデジタルの狭間にある4体の人物彫刻と、その表情の認識を阻害するエフェクトを、鑑賞者の視点とインタラクティブに生成して提示します。

ルネ・マグリットの「恋人たち」(1928年)、「人の子」(1964年)、ピエール・ボナールの「化粧台」(1908年)、また現代ではThomas Schutteの「Man Without Face」(2018年)など、顔の見えない人物像は様々なアーティストの手によって制作されてきました。顔が見えないことは、鑑賞者にその人物に関する多くの情報の欠損を感じさせ、結果としてそれらを補おうとする精神的なインタラクションを発生させます。本作品は、この意味でこれらの作品に連なるものです。 一方で、現代は日常的に顔の見えないコミュニケーションに溢れるようになりました。SNSの発達により、会わずともコミュニティに属し、非常に多くの文字によって人と人とがリアルタイムに会話をするようになりました。さらにCOVID-19の影響により人々はマスクをつけざるを得ない状況に陥り、対面ですら、相手の情報がわからないことも日常となりました。

本作品のテーマは、この”顔の見えないコミュニケーション”から生じる孤独の感覚です。日本で孤独感や孤独死が問題となってから久しいですが、現代では20代や30代の若い世代が最も孤独を感じていることが知られています。先述のように、SNSの存在によってコミュニティに属することが非常に容易になった現代において、孤独感の原因は他者とのかかわりの少なさではなく、その質にあると思われます。

本作品で私は現代における孤独の定義を探索し、孤独の感覚が生じる各シチュエーションを抽象化し、4体の人物オブジェクトを制作しました。関わりたい人の顔が見えないという体験は、現代の人と人との関わり方を象徴しています。相手のことをよく知らないまま、我々は様々な感情を日々募らせているのではないでしょうか。 この体験により、逆に各個人の孤独のシチュエーションを想起させ、自己と孤独の付き合い方の再定義を促すことを意図しています。

作品のために作られたMRディスプレイシステムは、体験者の視点をリアルタイムに反映した3D映像を提示することで、ディスプレイの向こうに空間が広がっているような知覚を引き起こします。このシステムの実現により、彫刻として人物像が目の前にある感覚と同時に、現実では不可能な表情認識の阻害エフェクトを体験者とインタラクティブに発生させることができます。 一般への展示の際には、体験者は11.2gのパッチを眼鏡に取り付けて頂くことでこの作品を鑑賞することができます(裸眼の方には、合計32.3gの眼鏡とパッチのセット)。

ディスプレイを直接動作させている様子

[Credits]
Tatsuro Kudo (Art Direction/Programming/Filming & Editing/Actor)
Music: “Mandelbrot” By John Starcluster

[Software]
Software: Unreal Engine 5.1.1, Cortex 8.1.0(with Cortex SDK 2), Visual Studio 2019
Assets for Unreal Engine: Twinmotion Posed Humans 1, FluidNinja VFX Tools
Language: C++, Blueprint, hlsl

[Hardware]
Motion Analysis Kestrel 4200 x 10, SONY FW-85BZ40H/BZ(85-inch display) x 2, Windows PC(OS 11) x 3

[Supported from]
Kurume Institute of Technology